なぜAIは犯罪に悪用される?実例3つと身を守る方法を解説

生成AIは便利な一方、詐欺やなりすまし、不正アクセスへの悪用も報じられています。

ただし、AIそのものに犯罪の意思があるわけではありません。人がAIを使うことで、従来の犯罪をより速く・大量に・本物らしく行える点が問題です。

この記事では、AIが悪用される理由、実際の3つの事例、今日からできる対策を分かりやすく解説します。

まず知っておきたい前提

AIが自分で犯罪を考えているわけではない

「AI犯罪」という言葉を聞くと、AIが勝手に犯罪を計画しているような印象を受けるかもしれません。 しかし、現在問題になっている多くのケースは、 犯罪をしようとする人が、作業の一部にAIを利用しているものです。

犯罪の意思と目的を持つのはAIではなく人です

人が目的を決める

だます、なりすます、不正に情報を得るなどの目的を持つ

AIが作業を補助する

文章作成、翻訳、画像加工、音声合成、プログラム作成などを助ける

包丁が料理にも犯罪にも使われるように、技術の良し悪しは使い方によって変わります。 AIも仕事、学習、医療、創作に役立つ一方で、悪意のある人に利用される可能性があります。

米国のFBIも、AIの利用自体が犯罪なのではなく、悪意のある人物が犯罪を進めるためにAIを利用することがあると説明しています。

また、IPA(情報処理推進機構)は「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向け脅威で、 「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を初めて選出し、3位としました。

根拠となる公的資料

ランキングの読み違いに注意

この3位は専門家の投票による注目度のランキングです。 「AI犯罪が全犯罪の中で3番目に多い」という意味ではありません。

この章の結論 AIを必要以上に怖がるのではなく、AIによって犯罪の何が変わったのかを正しく知ることが大切です。
悪用されやすい5つの理由

なぜAIは犯罪に悪用されるのか

AIが犯罪に悪用される理由は、能力が高いからだけではありません。 特に関係しているのが、 速さ・量・自然さ・本物らしさです。

01

短い時間で大量の文章を作れる

これまで詐欺メールを大量に作るには、 時間も人手も必要でした。

生成AIを使えば、似た内容の文章を 短時間で大量に作り分けられます。

悪用されると ひとりでも、非常に多くの相手へ接触しやすくなります。
02

自然な文章や翻訳を作れる

以前の怪しいメールには、不自然な日本語や 翻訳の間違いが多く見られました。

現在はAIによって、相手の国に合わせた 自然な文章を作りやすくなっています。

注意 「日本語が自然だから安全」とは判断できません。
IPAの解説書を確認する ↗
03

相手に合わせた内容を作れる

SNSなどで公開されている名前、勤務先、趣味、 家族関係などが悪用される場合があります。

こうした情報を文章へ反映すると、 自分を知っている人からの連絡 のように見せかけやすくなります。

悪用されると 相手が自分の情報を知っているだけで、信用してしまう危険があります。
04

本物らしい画像・声・動画を作れる

AIは、実在する人物に似た画像や声、 映像を作ることもできます。

本来は映画や翻訳、支援技術にも使われますが、 悪用されると家族や上司、有名人などへの なりすましに使われる可能性があります。

重要 顔や声が同じでも、本人とは限りません。
05

必要だった知識や時間を減らせる

AIが犯罪を自動的に完成させるわけではありません。 それでも文章や画像の作成、情報整理、 プログラム作成などを補助できます。

その結果、これまで一部の作業に必要だった 知識や時間のハードルを下げる可能性 があります。

誤解しないために 犯罪の目的を決めるのは人であり、AIはその作業を補助する道具です。

AIが犯罪を拡大させる4つの特徴

速さ
自然さ
本物らしさ
AIによって、突然まったく新しい犯罪だけが 生まれたわけではありません。詐欺、なりすまし、 脅迫、不正アクセスといった従来の犯罪が、 より速く・大量に・見分けにくくなる ことが大きな変化です。
では、実際にはどこで使われる?

AIはどのような犯罪に使われているのか

上で紹介した 速さ・量・自然さ・本物らしさ は、次のような犯罪や嫌がらせに 悪用される可能性があります。

フィッシング詐欺

AIが使われる部分

自然なメールやSMS、翻訳文などの作成

注意したいサイン

急なログイン、支払い、本人確認を求めてくる

なりすまし詐欺

AIが使われる部分

家族や上司などに似せた声・画像・映像

注意したいサイン

「今すぐ」「秘密にして」と対応を急がせる

投資・ロマンス詐欺

AIが使われる部分

架空の人物画像、会話文、プロフィール

注意したいサイン

会ったことのない相手がお金を求めてくる

画像を使った嫌がらせ

AIが使われる部分

他人の写真を本人の同意なく加工する

注意したいサイン

写真の送付や秘密の共有を強く求めてくる

サイバー犯罪

AIが使われる部分

情報整理やプログラム作成などの補助

注意したいサイン

不審なログイン通知や身に覚えのない操作

ここは誤解しないように注意

怪しい連絡のすべてに、 AIが使われているわけではありません。 AIが使われたかどうかを、 見た目だけで断定することも困難です。

AIの使用を確認できなくても、 送金・パスワード・認証コードを求める連絡 には、同じように警戒する必要があります。


ここからは実際のニュース

実際に報道・公表された3つの事例

AIの悪用は、すでに現実の事件や被害として 報告されています。ここでは、特に知っておきたい 3つの事例を紹介します。

事件の細かい手口は省き、 「何が起きたか・AIが担った部分・覚えておくこと」 に絞って見ていきます。

3人 中高生 2025年2月・日本
CASE 01

生成AIを補助的に使ったとされる 不正アクセス事件

中高生3人が、不正に入手されたIDやパスワードを 利用するプログラムで、携帯電話回線を不正に 契約した疑いで逮捕された事件が報じられました。 IPAによると、プログラムを作る際に 生成AIを補助的に使った とされています。

AIが担った部分

不正に利用されたプログラム作成の補助

覚えておくこと

AIが勝手に始めたのではなく、 人が目的を決めて利用した事例です。

報道の読み方: 報道時点では逮捕・容疑の段階です。 逮捕されたことと、有罪が確定したことは 同じではありません。
公表資料・当時の報道 IPAの解説書 当時のニュース ↗
約2億 香港ドル 2024年1月・香港
CASE 02

ディープフェイクのビデオ会議で 約2億香港ドルの被害

英国本社のCFOを名乗る人物から連絡を受けた 従業員が、グループでのビデオ会議に参加。 画面に映る人物を本物だと信じ、 指示された口座への送金を進め、 約2億香港ドルの被害 が発生しました。

AIが担った部分

公開されていた映像や音声を利用した、 事前収録のディープフェイク会議

覚えておくこと

顔や声、ビデオ会議だけでは 本人確認になりません。

確認方法: 高額な送金や重要な依頼は、普段から知っている 電話番号など、別の連絡手段で本人へ 確認することが重要です。
114件 警察が把握 2025年・日本
CASE 03

子どもの写真を本人の同意なく 加工する被害

警察庁は、18歳未満の人の写真などを 生成AI等で性的な画像へ加工した事案を、 2025年に114件把握した と公表しました。被害者の約9割が中高生で、 行為者は同級生や同じ学校の相手が約6割でした。

AI等が担った部分

他人の写真を、本人の同意なく 別の画像へ加工するために利用

覚えておくこと

作られた画像が偽物でも、 本人が受ける被害は現実のものです。

数字について: 内訳は生成AIの使用が24件、画像加工アプリが2件、 方法が特定されていないものが88件です。 114件すべてで生成AIの使用が確定したという 意味ではありません。
3つの事例に共通していること

AIが犯罪を考えたのではなく、 人が既存の犯罪や嫌がらせを 速く・本物らしく行うために利用した という点です。

次は、AIによって犯罪がどのように 変化したのかを整理します。
CASE DATA ANALYSIS

AIによって犯罪はどう変わったのか

先ほどの事例を整理すると、変化の中心は 「犯罪の種類」よりも、 実行する速さや規模 にあることが分かります。

SPEED 速さ 作成時間を短縮
SCALE 接触できる人数が増える
NATURAL 自然さ 文面の違和感が減る
REALISM 本物らしさ なりすましが巧妙になる
比較項目
従来の手口で見られた形
AIが悪用された場合
01 文章作成
従来 文章を一通ずつ考える
AI悪用時 文面を短時間で大量に作り分ける
02 言語
従来 不自然な外国語が見分ける手がかりになる
AI悪用時 より自然な日本語を作りやすくなる
03 なりすまし
従来 盗んだ写真などを利用する
AI悪用時 架空の顔、似せた声や映像も利用できる
04 情報収集
従来 相手の情報を人が調べて整理する
AI悪用時 公開情報の整理や文章への反映を補助できる
05 作業補助
従来 一部の作業には専門知識や時間が必要
AI悪用時 AIが作業を補助し、時間を短縮する

※この比較は件数や能力を数値化した統計ではなく、 前述の事例や公的資料から見える代表的な傾向を 整理したものです。

KEY INSIGHT

ひとことで言えば、AIは犯罪を 「増幅する道具」 になり得るということです。

AIは「守る側」にも使われています

不正な取引の検知、迷惑メールの分類、 偽サイトの発見など、防犯やセキュリティ対策にも AIが活用されています。

そのため、 「AI=危険」 と決めつけるのではなく、誰がどのような目的で 使っているのか、どのような確認やルールが 用意されているのかを見ることが大切です。

DETECTION & VERIFICATION

AIが作ったものか、見抜くことはできる?

見た目だけでは 100% 正確な判定は難しい

本物か偽物かを、完全に見分けることは困難

文章、画像、声、動画だけを見て、AIが作ったものかどうかを一般の人が100%正確に判定するのは難しくなっています。

理由 1

以前の手がかりが通用しにくい

画像の指や文字の崩れ、音声の不自然な間などが手がかりになることもありましたが、技術は改善を続けています。

理由 2

本物を偽物と誤解することもある

画質の低い本物の映像や、不自然な文章を「AIが作った偽物」と誤解する場合もあります。判定ツールの結果だけで断定するのも危険です。

大切なのは 見破ること 連絡の経路と要求内容を確認すること
CHECK 4

見た目ではなく、この4つを確認する

1

誰から届いたか

表示名だけではなく、メールアドレス、電話番号、公式アカウントかを確認します。

2

何を要求されているか

送金、パスワード、認証コード、身分証、写真を求められたら立ち止まります。

3

なぜ今すぐなのか

「今日中」「秘密にして」「今すぐ」と急がせるのは、詐欺でよく使われる圧力です。

4

別の方法で本人確認できるか

届いた連絡へそのまま返信せず、以前から知っている番号や公式窓口へ自分から連絡します。

AI時代の本人確認

顔が見えたから本人
声が同じだから家族
別の連絡手段で確認する

「本物らしく見える」だけで信用せず、別の経路で確認できて初めて本人と判断する。
この習慣が、AI時代の大切な防犯になります。

IF YOU NOTICE DAMAGE

もし被害に気づいたら

AIが使われたかを調べる前に、被害を広げない行動を取りましょう。

まず行う5つのこと

  1. 1
    相手との連絡と追加の支払いを止める
  2. 2
    銀行・カード会社などへ連絡する 利用した決済サービスへ、できるだけ早く相談します。
  3. 3
    メッセージや振込記録を保存する URL、相手のアカウント、メール、スクリーンショットなどを残します。
  4. 4
    パスワードと認証設定を確認する パスワードを変更し、多要素認証を設定します。
  5. 5
    警察や相談窓口へ相談する

ひとりで抱え込む必要はありません。早く相談するほど、被害を止めたり証拠を残したりできる可能性が高まります。

SUMMARY

まとめ:AIを怖がるより、確認する習慣を持とう

AIが犯罪を考えるのではなく、人が道具として悪用しています。

AIは従来の犯罪を、速く・大量に・本物らしくする可能性があります。

AIが作ったものかを100%見抜こうとせず、別の連絡手段で確認することが大切です。

この記事で覚えておきたいこと

「本物らしい」 「本物である」

被害に気づいたら、支払いを止め、証拠を残し、早めに相談しましょう。