自然な回答でも、
元の情報を確認。
AIにメモを渡して、丁寧な連絡文を作ってもらう。便利な使い方ですが、完成した文章に自分が決めていない約束が加わることがあります。
実際に4つのAIへ同じメモを渡した記録では、Claudeが「決まり次第お知らせします」を追加し、Geminiは変更前の時刻を省略しました。一方、ChatGPTとCopilotは必要な情報を保ちました。
まず見るのは、日時・数字・名前・未定の条件。そして、元にない情報が増えていないかです。
あとで知らせる約束は書いていない。
「決まり次第お知らせします」を追加。
日時・場所・未定の情報は保持。
この記事では、ハルシネーションの意味と原因を整理したうえで、実際の回答を使いながら、間違いを見つけて直す手順を紹介します。
実例は、2026年10月11日に行った4サービス比較の連絡文課題を再掲したものです。本記事のために新しく取得した回答ではありません。
ハルシネーションとは?
ハルシネーションとは、AIが、もっともらしい誤情報を生成する現象です。実在しない本や論文、間違った日付、根拠のない説明が、自然な文章で示されることがあります。
米国の公的機関NISTは、これを「Confabulation(作話)」として取り上げています。自信があるように示される誤情報に加え、入力と食い違う出力なども説明しています。
定義の確認先:NIST「Generative AI Profile」2.2 Confabulation(PDF)
直す場所を、4つに分けて見る
ハルシネーションの範囲は、資料や文脈によって異なります。回答を見直すときは、「何が元の情報とずれたか」を分けると、修正する場所が分かりやすくなります。
| ずれの種類 | 見るところ | 今回の連絡文で確認したこと |
|---|---|---|
| 事実の誤り | 日付・数字・名前などが、元のメモや確認した資料と違っていないか。 | 4件では、日付・場所・変更後の時刻が別の内容に変わる回答は見られなかった。 |
| 情報の省略 | 残すべき情報が、短くする途中で抜けていないか。 | Geminiの初回は、変更前の「14時」が抜けた。 |
| 元にない補足 | 新しい事実・予定・約束などが加わっていないか。 | Claudeの初回は「決まり次第お知らせします」を追加した。 |
| 指示・形式のずれ | 文字数・項目数・省略や追加をしない条件を守っているか。 | 4件とも100字以内だった。Geminiの省略とClaudeの追加は、それぞれ指定した条件に反していた。 |
「情報を省略しない」という指示に反して時刻が抜けた場合は、省略と指示違反の両方です。すべてを同じ意味のハルシネーションとして片づけず、直す箇所を具体的に見つけるための分類として使ってください。
同じメモを、4つのAIに渡した
元のメモは、次の3文です。実際の予定ではなく、比較のために作った架空のメモを使っています。
10月20日の打ち合わせは、開始を14時から15時に変更。
場所は第2会議室。
終了時刻はまだ決まっていない。
これを、情報を省略・追加せず、100字以内の丁寧な連絡文にするよう依頼しました。「日時や場所を変えない」「決定と未定の区別を変えない」ことも条件にしています。
実際に入力した質問の全文を読む
以下は実験用の架空のメモです。 相手に送れる丁寧な連絡文に書き直してください。 条件: ・連絡文は100字以内。 ・メモの情報を省略しない。 ・日時、場所、決定事項と未定事項の区別を変えない。 ・メモにない情報を追加しない。 ・連絡文だけを回答する。 メモ: 10月20日の打ち合わせは、開始を14時から15時に変更。 場所は第2会議室。 終了時刻はまだ決まっていない。
| サービス | 元の情報 | 確認した結果 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 日時・変更前後の時刻・場所・終了時刻未定を保持。 | 情報を保持 元にない事実や約束は見られなかった。末尾の挨拶は一般的な表現として扱った。 |
| Gemini | 日付・変更後の15時・場所・終了時刻未定を保持。 | 変更前の時刻を省略 「14時から15時」のうち、14時が抜けた。 |
| Claude | 日時・変更前後の時刻・場所・終了時刻未定を保持。 | 元にない約束を追加 「決まり次第お知らせします」を追加。 |
| Copilot | 日時・変更前後の時刻・場所・終了時刻未定を保持。 | 情報を保持 元にない事実や約束は見られなかった。 |
丁寧な一文でも、約束が増えることがある
10月20日の打ち合わせは、開始が14時から15時に変更となりました。場所は第2会議室です。終了時刻は未定ですので、決まり次第お知らせします。
日時や場所は合っています。しかし、元のメモにあるのは「終了時刻はまだ決まっていない」という情報だけです。後から知らせるかどうかは決めていません。
このまま送ると、受け取った相手は「終了時刻が決まれば連絡が来る」と考えます。今回の問題は、元にない行動の約束が加わったことです。

ChatGPT・Gemini・Copilotの初回回答も読む
ChatGPT
10月20日の打ち合わせは、開始時刻を14時から15時に変更いたしました。場所は第2会議室です。終了時刻は未定です。よろしくお願いいたします。
Gemini
10月20日の打ち合わせは、開始が15時に変更となり、場所は第2会議室です。なお、終了時刻は未定となっております。
Copilot
10月20日の打ち合わせは、開始時刻を14時から15時に変更いたします。場所は第2会議室です。終了時刻は未定です。
実施日は2026年10月11日。4サービスとも無料プランですが、新規チャットと継続チャットが混在し、モデル・設定の記録もそろっていません。各1件の観察なので、サービス全体の優劣や誤り率は判断できません。ここでは、元のメモと照合する方法を学ぶ実例として使います。
修正すると、どう変わった?
Claudeには、どの一文が、なぜ不要なのかを指定して修正を依頼しました。実際に送った指示は次のとおりです。
実際に送った修正指示
「決まり次第お知らせします」は元のメモにない約束なので削除してください。 元のメモの情報をすべて残し、ほかの条件も守って、100字以内の連絡文だけを書き直してください。
10月20日の打ち合わせは、開始が14時から15時に変更となりました。場所は第2会議室です。終了時刻は未定です。
修正後は、元にない通知の約束がなくなり、必要な情報は残りました。

- 10月20日、14時から15時への変更が残っている。
- 場所は第2会議室のまま。
- 終了時刻は未定のまま。新しい約束は加わっていない。
Geminiの省略も、具体的な指定で直せた
Geminiには「変更前の『14時』が省略されています。『14時から15時に変更』と明記してください」と伝えました。修正後は変更前後の時刻がそろい、場所と終了時刻未定も保持されました。
「もっと良くして」より、直す箇所と残す情報を具体化すると、自分でも修正結果を確認しやすくなります。今回うまく直せたことが、毎回同じ結果になる保証にはなりません。
元の質問・全回答・画面の記録:ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの比較記事
AIは、なぜ間違える?
原因は一つではありません。文章生成の学習方法に加え、使える情報、質問の条件、評価の仕方などが関係します。
自然な文章を学習する
言語モデルは、大量の文章から次に続く言葉を予測するように学習します。文章が自然につながっていても、すべての主張に事実の裏付けがあるとは限りません。
情報が足りない・古い
学習した情報に不足や誤りがあったり、最新の変更を確認できなかったりすると、根拠のない内容で補ってしまうことがあります。
入力とのずれが生じる
元の情報があっても、回答を作る途中で内容が変わることがあります。今回の連絡文では、情報の省略と、新しい約束の追加が起きました。
推測が報われる評価もある
OpenAIは、正解率だけを重視する評価では、「分からない」と答えるより推測するほうが得点につながり、誤情報が残りやすいと説明しています。
原因の説明:OpenAI「Why language models hallucinate」/OWASP「LLM09:2025 Misinformation」
検索や外部資料の利用は、回答の信頼性を高める方法の一つです。使うときは、出典を開き、回答の数字や条件が、その資料に書かれているかまで確かめましょう。リンクが付いているだけでは、内容の一致は分かりません。
回答を確かめる3ステップ
メモから連絡文を作る場合は元のメモ、新しい情報を調べる場合は公式サイトや原典が確認先になります。まず、どの情報と比べればよいかを決めます。
- 確認する元の情報を用意する
自分のメモ、契約の原文、公式の料金ページなどを手元に置きます。ニュースや制度は、発表日・更新日・対象の地域も見ます。
- 間違うと困る項目を比べる
日時、数字、名前、決定・候補・未定の区別、追加された約束を確認します。今回なら「14時→15時」「第2会議室」「終了時刻未定」が比較する項目です。
- ずれを指定して直し、もう一度比べる
「変更前の14時を残して」「元にない通知の約束を削除して」のように頼みます。直した箇所以外も含め、元の情報との一致を見直します。
| 確認する項目 | 見るところ | 今回のメモなら |
|---|---|---|
| 日時・数字 | 日付、時刻、金額、人数などが合っているか。 | 10月20日、14時から15時へ変更。 |
| 名前・場所 | 人名、商品名、会場名などが別のものに変わっていないか。 | 第2会議室。 |
| 決定・未定 | 候補や未定が、決定済みの情報になっていないか。 | 終了時刻はまだ決まっていない。 |
| 元にない情報 | 予定、約束、理由などが加わっていないか。 | 後から知らせる約束は書いていない。 |
| 依頼した条件 | 文字数、形式、残す情報の条件を守っているか。 | 100字以内、情報を省略・追加しない。 |
使う前の指示でも、ずれを減らす
対象・時点・地域・目的を伝え、不明な点は不明のまま残すよう頼みます。事実・推測・提案を分けてもらうと、確認する箇所を見つけやすくなります。
自分のメモを整えるときの指示例
以下のメモだけを使って、連絡文を作ってください。 ・日時、数字、名前、場所を変えない。 ・決定、候補、未定の区別を保つ。 ・メモにない事実、予定、約束を追加しない。 ・情報が足りなければ、推測せず確認を求める。 ・文字数や形式は、次の条件に合わせる。 条件:[文字数・宛先・文体などを書く] メモ:[ここに元のメモを貼る]
これは説明用の指示例です。今回の4サービス比較で入力した質問とは別で、全サービスへ追加検証したものではありません。個人情報や仕事の秘密を含む場合は、入力前に取り扱いを確認してください。
最新の情報を調べるときの指示例
[対象・地域・確認したい日付]について調べてください。 確認できた事実と、推測・提案を分けてください。 確認できない点は「不明」としてください。 回答の根拠になる公式ページと、その発表日・更新日を示してください。
説明用の例です。回答後はリンクを開き、実在する資料か、対象の地域やプランが合っているか、数字・条件が一致するかを自分でも確認します。
独立した情報源による確認と人の監督:OWASP「Cross-Verification and Human Oversight」
大切な情報へ使う前に
確認の強さは、間違った場合の影響に合わせます。アイデアを集める段階と、送信・公開・契約などに使う段階では、必要な確認が変わります。
下書き・整理に使う
- 自分のメモを読みやすく整える。
- 考えをまとめ、アイデアの候補を出す。
- 調べたい論点や検索する言葉を整理する。
使う前に内容を見直せる作業から始めると、ずれを確認しやすくなります。
原典を確かめて使う
- 送る文章の日時・金額・約束。
- 公開する人名・数字・引用・出典。
- 医療・法律・税金などの重要な判断に関わる情報。
公式資料や原文を確認し、専門的な判断が必要な場合は、担当機関や専門家へ確認します。
架空の判例が、裁判資料に使われた
「Mata v. Avianca」の裁判では、ChatGPTが作った実在しない判例や引用が提出資料に使われ、存在を疑う指摘の後もその内容が主張されました。
2023年6月22日の裁判所の決定は、弁護士2人と所属事務所に総額5,000ドルの制裁金を連帯して科しています。裁判所は、信頼できるAIを補助に使うこと自体が不適切とはせず、提出する情報を確かめる弁護士の責任を説明しています。
原文の確認先:米国連邦地方裁判所の決定全文(Justia掲載)
よくある疑問
有料版なら、間違いを気にしなくてよい?
課金していることだけで、個々の回答の正しさは判断できません。使えるモデルや機能の違いはあっても、重要な内容は元の資料と照合します。
AIに「本当に正しい?」と聞けば確認できる?
見直すきっかけにはなりますが、AIの再回答だけでは元の情報との一致は確かめられません。「どの資料の、どの記述が根拠か」を確認し、資料自体を開いて比べてください。
別のAIも同じことを言ったら、正しい?
別のAIに聞くと、気になる点を洗い出せる場合があります。ただし、回答が一致したことだけでは、事実の確認は完了しません。日時・数字・出典は、元のメモや一次資料で確認します。
回答のすべてを、一文ずつ調べる必要がある?
まず、間違うと困る日時・数字・名前・条件・約束を優先します。重要な文書を送信・公開するときは、引用や出典も確かめます。確認できない情報は、断定を避けたり、使うのを保留したりします。
使う前に、元の情報と比べよう
今回の連絡文は、4件とも100字以内でした。それでも、変更前の時刻が抜けたり、元にない通知の約束が加わったりしました。
元の情報を用意する → 重要な項目を比べる → ずれを指定して直し、再確認する。
この順番で見れば、回答のどこが合っていて、何を直せば使えるかを、元の情報を根拠に判断できます。
参考資料・確認した内容(4件)
- NIST「Generative Artificial Intelligence Profile」(PDF)2.2 Confabulationの定義と、出典・引用を確認する考え方を参照。
- OpenAI「Why language models hallucinate」学習と評価の仕組み、推測が報われる評価と誤情報の関係を参照。
- OWASP「LLM09:2025 Misinformation」誤情報・過信のリスクと、外部資料による確認・人の監督を参照。
- Mata v. Avianca・2023年6月22日の裁判所の決定Justiaに掲載された決定全文で、架空の判例の提出、確認責任、制裁の内容を参照。
資料確認日:2026年10月12日。本文中の操作例と修正結果は、2026年10月11日の当サイトの4サービス比較記録に基づきます。
