技術例の年代について(2026年10月20日追記)
本文のDeepSeek-V3は2024年12月に初稿が公開された技術報告、Gemini 1.5は2024年2月の発表・同年の技術報告を使った、仕組みを理解するための例です。2026年現在の最新モデル一覧や、現在の各サービスの性能順位を示すものではありません。使えるモデルや機能は、利用するサービスの現行の案内で確認してください。
ChatGPT、Gemini、Claude、DeepSeekなど、今は数多くのチャットAIがあります。名前は違っても、質問を入力すれば会話するように答えてくれる点は同じです。
もし違うのが名前だけなら、どれを使っても同じ答えになるはずです。ところが実際には、返し方やできることに差があります。
この記事では、特定のAIを順位づけするのではなく、回答ができるまでの中身を身近な例で順番に見ていきます。
ここで扱うのは、人と文章や音声でやり取りする「チャットAI」です。
なぜ、どのチャットAIも同じように会話できるのか
多くのチャットAIは、「大規模言語モデル(LLM)」を中心に作られています。
大規模言語モデルは、文章を細かな単位に分け、「この続きには、どの言葉が来る可能性が高いか」を計算しながら回答を作ります。
※ 実際の処理はもっと複雑ですが、ここでは仕組みをつかみやすいように単純化しています。
実際のチャットAIは、これを非常に大きな規模で繰り返しています。そのため、質問への回答、文章作成、要約、相談など、さまざまな会話ができます。
基本的な仕組みが似ているため、どのサービスを開いても「文章を入力して、文章で答えてもらう」という見た目になります。
ただし、同じ方法で会話できることと、中身が同じであることは別です。
最初に「サービス全体」と「回答を考えるAI」を分ける
チャットAIの違いがわかりにくい理由の一つが、「サービス」と「AIモデル」が同じような名前で呼ばれていることです。
会社の「問い合わせ窓口」に置き換えてみる
担当者の知識と、使える道具
どの窓口でも、利用者が質問して回答を受け取る流れは同じです。しかし、担当するAIモデル、身につけた知識、対応ルール、使える道具が違えば、同じ質問でも返ってくる回答は変わります。
モデルの設計が違う|DeepSeek-V3の場合
AIモデルの内部では、入力された言葉を処理するために、非常に多くの数値が使われています。この数値は「パラメータ」と呼ばれます。
ただし、すべてのAIが、回答を作るたびにすべてのパラメータを同じように動かすわけではありません。
DeepSeek-V3は「必要な専門部分だけを動かす」
DeepSeek-V3の技術報告 ↗では、「Mixture of Experts(MoE)」という設計が使われています。
※ 図は仕組みを理解するためのイメージです。実際には、文章を分けた細かな単位である「トークン」ごとに、動かす部分が選ばれます。
実際のAI内部に、「文章担当」「計算担当」といった名前の人がいるわけではありません。「必要な部分だけを選んで動かす」考え方をつかむためのたとえです。
DeepSeek-V3の技術報告では、モデル全体で6710億個のパラメータを持ちながら、一つのトークンを処理するときに動くのは約370億個と説明されています。
モデルによって違うのは、頭脳の動かし方だけではありません。そもそも受け取れる情報の種類も異なります。
AIが持つ「感覚」が違う|文章以外も見られるか
文章だけを扱うAIもあれば、画像・音声・動画まで一緒に扱えるAIもあります。まずは、受け取れる情報の違いを比べてみましょう。
冷蔵庫の写真をAIへ送る
この食材で作れる夕食を考えて
文章だけを扱うモデルには、写真の内容を文章へ変換してから渡す必要があります。一方、画像も扱えるモデルなら、写真と質問を一緒に受け取り、内容を考えられます。
GoogleのGemini 1.5に関する技術報告 ↗では、長い文章に加えて、画像・音声・動画を含む情報を扱う能力が説明されています。
画面は似ていても、中の通り道は同じとは限らない
AIの「育て方」が違う|答え方や断り方が変わる理由
大量の文章を学んだだけのAIは、知識があっても、必ずしも人の指示どおりに答えられるとは限りません。そこで、基本的な学習のあとに、人との会話に向くよう追加の調整が行われます。
AIは「知識を学んだら完成」ではない
追加調整の方法は一つではない
ここでは、公開されている研究から、考え方の違いが分かりやすい2つの例を見てみましょう。
人が望ましい回答例を示し、複数の回答を比べて順位を付けます。その評価を使い、指示へ従いやすいモデルに調整しました。
- 1人が、望ましい回答の例を示す
- 2複数の回答を比べて、好ましい順に評価する
- 3その評価をもとに、AIを追加調整する
文章化された原則を参考に、AIが自分の回答を批評・修正します。さらに、AIによる回答の評価も学習へ利用する方法です。
- 1守るべき原則を文章で用意する
- 2原則を参考に、AIが回答を批評・修正する
- 3AIによる回答の評価も、追加調整に利用する
学習後にも、サービス側の指示が加わる
さらに、サービス側は利用者の質問と一緒に、「どのような立場で答えるか」「何をしてはいけないか」といった内部の指示をAIへ渡すことがあります。これは、モデルを作るための追加学習とは別の仕組みです。
答えが作られる
AIが使える「情報の範囲」が違う|Web検索・コンテキスト・記憶
AIの回答は、モデルがもともと持つ知識だけで決まりません。外から情報を探せるか、今どれだけ見渡せるか、次の会話へ何を残せるかも、使いやすさを大きく変えます。
会社の仕事に置き換えると、役割の違いが見えてくる
Web検索|必要な資料を外へ探しに行く
チャットAIは、いつでもインターネットを見ながら答えているわけではありません。検索を使わないときは学習で身につけた知識をもとに答え、検索を使うときは現在のページを探してから回答します。
モデル内部の知識を使います。基本知識には答えられても、今日の出来事をその場で確認することはできません。
Web上のページを探し、見つけた情報をAIが整理します。情報源や日付を確認できる場合もあります。
モデルに追加できる道具は、検索だけではありません
コンテキストと記憶|机の上と引き出しは別
AIが一度に参照できる質問・会話・資料などの範囲は、「コンテキスト」と呼ばれます。会社の仕事でいえば、今使う資料を広げる机の広さに近いものです。
ただし、机の広さにあたるコンテキストと、次の会話にも情報を残す「記憶機能」は同じではありません。
- 今の質問や、それまでの会話
- 現在渡している文章や資料
- 回答を作るときに参照する範囲
- 利用者の好みや関心
- 続けている目標や作業
- 別の会話でも役立つ一部の情報
AIの「提供方法」も違う|同じモデルでも別サービスになる
ここまで見てきたように、チャットAIは頭脳となるモデルだけで完成しません。最後に、モデルを自分の環境へ持ち出せるかという違いと、新しいAIを見分ける順番を整理します。
モデルの中身を入手できるか|オープンウェイト
提供元のWeb画面やアプリ、APIなどを通して利用します。
ライセンスの範囲内で、企業のサーバーや自分の機器などに導入できます。
頭脳が同じでも、サービスの使い心地は変わる
- Web検索を使い、情報源も表示する
- 過去の会話を一部記憶する
- 短く、事実中心で答える
- 渡された社内資料だけを参照する
- 会話を次回へ残さない
- 初心者へ丁寧に説明する
新しいチャットAIは「5項目」で確認
名前だけで判断せず、次の順番で見ると違いを短時間でつかめます。
チャットAIは「中の組み合わせ」が違う
どのサービスも、質問を入力すると会話のように答えてくれます。違いは、次の3つにまとめられます。
中身はここが違う
- AIモデル
- 内部設計
- 学習・調整
- 画像・音声
- Web検索
- ファイル解析
- 記憶・参照量
- 安全ルール
- 提供方法
