源内は、政府職員がAIを使うための「共通の仕事場」です。
2026年10月20日、デジタル庁は源内でAIエージェント利用環境を展開すると発表しました。質問への回答だけでなく、資料を読み、整理し、文書に仕上げる流れまで支援する取り組みです。[2]
この記事でわかること:源内の仕組み/2つのエージェント環境/導入予定/安全性/生活への影響
公式資料に基づく解説記事です。源内の実機検証は行っていません。説明用の例と当サイトの考察は、その旨を記載しています。
目次|知りたいところから読む
「源内」とは?政府職員のためのAI利用環境
源内(げんない)は、デジタル庁が構築・運営する生成AIの利用環境です。政府職員の調査や文書作成を支援し、行政の仕事の質を高め、負担を減らすことを目指しています。
「ガバメントAI」は、政府が安全にAIを活用するための基盤です。その具体的な利用環境として、源内を各府省庁へ展開しています。
源内という名前の、単独のAIモデルがあるわけではありません。AIモデルが文章などを理解・生成する中核なら、源内はそれを仕事で使うための画面や道具、ルールをまとめた環境です。国内外のモデルを、用途に応じて選ぶ方針が示されています。
一般の人も使える?
政府職員向けの源内は、一般市民が登録する無料チャットとして公開されているサービスではありません。一方、一部のプログラムや構築手順はOSSとして公開されており、自治体や企業などが独自の利用環境を構築する際に活用できます。
OSSは、ソースコードを公開し、ライセンスの範囲で利用・改変・再配布できるソフトウェアです。コードが無償でも、クラウドやAIの利用料、管理の費用は別途必要になります。
出典:[1] 源内の概要、[5] 源内基準 1-3、[8] OSS公開発表。上の模式図は当サイト作成。
10月20日の発表を30秒で理解
発表の中心は、2つのエージェント環境と、その安全な使い方です。
- エージェントチャット順次導入
資料整理や文書作成を、複数の工程ごとまとめて依頼できる環境。10月20日から各府省庁等へ順次導入します。
- 源内工房導入目標
幅広いWeb調査や、動く試作品を作るための個人専用の開発環境。2026年12月頃までの導入を目指します。
- 源内基準公表
使う職員、管理者、開発者が守る責務やルールを整理。便利な機能とともに、情報管理や人による確認の方針を示しました。
出典:[2] デジタル庁・2026年10月20日の公式発表。工房の導入完了を発表したものではありません。
AIエージェントとは?作業の段取りも支援
AIエージェントは、人が伝えた目的に向けて、道具と手順を組み合わせながら作業を進める仕組みです。会議資料から報告書を作る場面で比べてみましょう。
- 職員が質問「この資料を要約して」
- AIが回答要点を文章にまとめる
- 職員が次の工程を依頼比較や文書への整形を、順に指示
- 職員が目的と条件を指定「複数資料を比べ、Wordの下書きに」
- AIが道具を使って処理資料を読む → 比較 → 文書作成
- 職員が途中と最後に確認必要な段階で修正・承認する
違いを見るポイントは、画面の形よりもどこまでの工程を扱えるかです。現在のチャット形式のサービスにも、検索・ファイル作成・エージェント機能を備えるものがあり、きれいに二分できるわけではありません。
AIエージェントとは?生成AIとの違いをわかりやすく解説源内でできること|仕事の場面で解説
源内には、従来からのAIアプリと、展開が進むエージェント環境があります。主な役割を4つに整理しました。
文章を作る・整える
文章作成、要約、校正、翻訳など、日常の文書業務を支援します。
活用イメージ:長い説明を、読み手に合わせた短い下書きにする。
複数の資料を比べる
ファイルを読み込み、共通点や相違点、確認すべき情報を整理します。
活用イメージ:資料ごとの条件の違いを一覧にまとめる。
整理してファイルにする
エージェントチャットでは、資料の読み込みから、整理・Word出力・保存までまとめて依頼できます。
公式の紹介例:会議資料から決定事項と検討課題をまとめる。
行政の情報を調べる
法制度や過去の国会答弁を調査・分析する行政実務用のアプリもあります。
掲載範囲:2026年8月時点のデジタル庁内アプリ一覧で確認。
機能や利用条件は、所属組織・権限・提供状況で異なります。「活用イメージ」は説明用の例です。公式の初級編には、案内文案、幹部向け要約、要綱の初稿、アンケート集計の操作紹介もあります。
出典:[1] 提供アプリ、[3] 導入編、[5] 源内基準 別紙2、[12] 初級編。
仕事の手順を残せる「スキル」とは?
スキルは、仕事のレシピに、確認項目も付けたようなものです。参照する資料や処理の手順、出力の形などを、AIが使えるファイルとして残します。
エージェントチャットは手順を保存・修正して再利用できます。源内工房もスキルを作成でき、政府横断で共有する「源内ライブラリ」の整備方針も示されています。
スキルの保存は、AIモデルを新しく学習させることとは別です。制度や業務が変われば、手順も見直します。源内ライブラリの全体への提供完了日は、今回の発表では確定されていません。
エージェントチャットと源内工房の違い
日々の事務を支援
読む・比べる・文書にする。源内のチャット画面で、一連の作業を依頼します。
調査と試作を支援
Webを広く調べ、動く試作品を作る。個人専用の開発環境で作業します。
| 比べる点 | エージェントチャット | 源内工房 |
|---|---|---|
| 主な仕事 | 日々の質問、資料整理、分析、文書作成。 | 多段階のWeb調査、Webアプリの試作・動作確認。 |
| 使う画面 | 源内のWeb画面内で対話する。 | 専用URLから、開発用の画面などを利用する。 |
| Webの調査 | 用意された検索索引(検索用のデータ)を利用。任意URLの直接取得はできない。 | 複数サイトを直接参照。危険と判断される接続などは制限。 |
| 作業手順の作成 | 文書・データ処理など、複数タスクのスキルを作る。 | 調査・コード実行・試作を組み合わせた高度なスキルを作る。 |
| 操作の難しさ | 日本語で依頼でき、初めて使う職員の入口となる環境。 | 日本語で指示できるが、操作・処理の確認はより複雑。 |
| 利用者と条件 | 幅広い政府職員を想定。注意事項の確認・同意が必要。 | 処理を確認する能力などを管理者が確認し、申請に基づき権限を付与。 |
| 各府省庁等への展開 | 順次導入 2026年10月20日から。 | 導入目標 2026年12月頃までを目指す。 |
資料整理や文書作成はエージェントチャット。Webを広く調べたり、動く仕組みを試作したりするときは源内工房が選択肢になります。
共通点は、スキルの作成とファイル出力に対応すること。同じスキルを両環境で共用できる設計です。保存には注意が必要で、チャットのマイドライブは永続保存を保証せず、工房には自動バックアップがありません。必要な成果物は別途保存します。
機能・条件:[5] 源内基準 別紙1・2-3・2-4・3-5・3-6。展開時期:[2]。2026年10月時点の説明です。
約18万人が対象|導入はどこまで進んだ?
全府省庁の政府職員を対象とする実証の規模です。
全員の利用実績や、毎日の利用人数を示す数字ではありません。
2026年度は、大規模実証を通して効果と課題を確かめる段階です。源内全体の展開と、新しいエージェント機能の導入を分けて見ると、進み具合がわかります。
- 2025年5月〜利用・検証デジタル庁内で源内を構築
全職員が使える環境で、複数のAIアプリを提供。[1]
- 2026年4月24日公開源内の一部をOSSとして公開
画面のソースコードや一部のAIアプリ、開発テンプレートなどを公開。[8]
- 2026年5月実証開始
- 2026年10月20日順次導入各府省庁等へエージェントチャットを展開
あわせて源内基準を公表し、源内工房の導入目標を示す。[2]
- 2026年12月頃まで目標源内工房の導入を目指す
10月27日時点では、今後の導入目標。[2]
- 2027年2月頃予定源内OSS Ver.2.0の公開予定
2つのエージェント環境を公開する計画。国民向けの無料サービス開始日ではありません。[2]
- 2027年度以降検討実証を評価し、本格利用開始を検討
費用対効果などを検証したうえで判断する方針。全機能の一斉稼働日が確定したという意味ではありません。[6]
補足:デジタル庁内では、エージェントチャットを2026年8月以降に全庁展開したとの記載があります。10月20日からの各府省庁等への展開とは別の段階です。2026年度は2026年4月〜2027年3月を指します。[5] 本文p.25
源内の安全性|3つの観点で確認
行政のAIには、情報を漏らさないこと、間違いを見逃さないこと、操作と責任を管理することが必要です。源内基準は、AIの安全性を扱うAISI(AIセーフティ・インスティテュート)の協力を得て、関係者が守るルールを整理しています。
① 情報を守る|入力できる範囲も決める
源内は政府の情報管理に合わせた環境ですが、あらゆる秘密を入力できるわけではありません。基盤となるガバメントクラウドは、デジタル庁が整備する政府共通のクラウド利用環境です。
- 処理・保存の場所
- 原則として国内のガバメントクラウドで処理・保存します。
- モデルの学習
- 入出力データをモデルの学習や性能改善に使わせないことを、事業者との契約で確保します。
- 入力できる情報
- 公表済み情報は原則利用可能。デジタル庁では「機密性2情報」まで扱う運用ですが、一律に入力できるわけではなく、各組織のルールや条件に従います。
- 入力禁止の情報
- 秘密文書に相当する「機密性3情報」、特定秘密、重要経済安保情報などは取り扱ってはならないとされています。
国内で使えない高度なモデルが必要な場合などは、海外で回答を作る処理(推論)を行う例外を設けています。その際は、処理後に海外で入出力を保存しない契約や、利用者・管理者へのリスク説明を求めています。運用・安全管理に必要なログは取得・管理されます。
「機密性」は、情報が漏れた場合の影響などに応じた区分です。
② 誤回答を見つける|重要な情報は原典と照合
AIが、事実と異なる内容をもっともらしく作ることをハルシネーションと呼びます。源内基準では、重要な情報は原典・法令・公表資料で確認し、計算結果も別の手段で検算するよう求めています。
AIが古い給付条件のまま案内文を作ったら?
そのまま使うと、制度を利用できる人を案内から漏らすおそれがあります。
職員が現行の条件・日付・根拠資料を確認し、必要な修正・承認を行ってから利用します。
職員が確認していないAIの出力を、行政資料や公文書へ直接転記しないことも定められています。
③ 操作を管理する|権限と人の確認を残す
- 扱う情報・ファイル・処理の範囲を限定。エージェントチャットは、職員のPCを直接操作する仕組みではありません。
- 重要な操作の前にも確認・承認。源内工房は利用権限を管理し、外部への書き込み通信の制限、操作ログ、危険なコマンドの制御などを組み合わせます。
- 想定外の動作は停止・報告。参照する資料に悪意ある指示を紛れ込ませる「プロンプトインジェクション」にも注意が必要です。
許認可や給付など、人の権利・利益に関わる業務では、影響に応じた利用制限も必要です。対策はリスクをゼロにする保証ではなく、ここでは公表された基準・設計を解説しています。
出典:[2] AISIとの協力、[5] 源内基準 1-2、1-5、2-2〜2-4、3-4〜3-6。
AIを安全に使うには?初心者が知っておきたい注意点と確認方法ChatGPTと源内の違い|目的と提供形態
比べたいのは、性能の優劣よりも誰が、何のために、どのルールで使うかです。
| 比べる点 | 源内 | ChatGPT |
|---|---|---|
| 主な目的 | 行政業務の質向上・効率化。 | 日常の相談、学習、仕事などの幅広い支援。 |
| 想定利用者 | 政府職員等。所属組織や機能ごとの条件がある。 | 一般の利用者、企業、教育機関など。 |
| 使用環境 | 政府の要件に合わせ、ガバメントクラウドを基盤に提供。 | OpenAIのWeb・アプリなど。個人・組織向けの利用形態がある。 |
| AI機能 | 汎用AI、行政実務用アプリ、エージェント環境など。 | 会話、検索、成果物の作成など。機能はプランや設定による。 |
| 使える範囲 | 府省庁のルール、権限、情報区分などで決まる。 | 規約、プラン、組織の管理設定などで決まる。 |
| 情報管理 | 源内基準と各組織のルールを適用。モデル学習への入出力利用を契約で制限。 | 個人向けと法人向けで扱いが異なる。法人向けは原則、業務データを学習に使わない。 |
個人向けChatGPTにも、学習への利用を制御する設定があります。安全性は、製品名だけでなく契約・設定・運用を合わせて確認する必要があります。
源内:[1][5]。ChatGPT:[9] 公式概要、[10] 法人向けプライバシー、[11] データ設定。性能や使い勝手の実測比較ではありません。
私たちの生活への影響|期待と課題
まず変化が期待されるのは、行政内部の調査や資料づくりです。今回の発表は、全国の自治体窓口を一斉にAI化するものではありません。
仕事の「前準備」が軽くなれば、何が変わる?
資料を集め、読み、整理する時間が減れば、住民への説明や複雑な相談、制度の改善を考える時間を確保できる可能性があります。スキルに手順を残すことは、異動や引き継ぎにも役立つでしょう。
ただし、効果を判断するには、導入人数に加えて次の3点を確かめたいところです。
- 時間
- 職員の確認・修正まで含めても、負担が減ったか。
- 品質
- 誤りや見落としが減り、根拠を説明できるか。
- 費用
- AI利用料だけでなく、運用・教育・安全管理の費用にも見合うか。
AIを使うだけで改善が決まるわけではありません。何を任せ、誰が確認し、その結果をどう説明するかまで含めて見ることが大切です。
上の3点は当サイトによる評価の視点で、実測結果ではありません。根拠となる公式の論点:[5] 責任・専門性・利用費用の管理、[6] 費用対効果の検証方針。
源内についてよくある質問
Q. 源内は誰でも無料で使えますか?
Q. 源内はChatGPTと同じAIですか?
Q. AIが行政の判断を自動で行うのですか?
源内基準は、職員が適切な段階で確認・判断・承認・停止を行うことを求めています。許認可や給付など、人の権利・利益に影響する業務には利用制限も必要です。
出典:[5] 1-2、2〜3章
Q. 約18万人がすでに利用していますか?
Q. 入力した情報は安全に管理されますか?
クラウド、契約、情報の区分、権限管理などの対策が示されています。ただしリスクがゼロになる保証ではなく、海外処理の例外や各組織のルールも確認する必要があります。
まとめ|源内を理解する3つのポイント
- 源内は、政府職員の共通のAI利用環境複数のアプリやモデルを、仕事に合わせて使います。
- エージェント環境を段階的に展開チャットは順次導入、工房は導入目標。約18万人は対象規模です。
- 便利さとともに、確認と責任を整える源内基準に沿って、人と組織がAIの作業を管理します。
源内で目指しているのは、AIに行政を丸ごと任せることではなく、調査や資料づくりを支え、職員が判断に向き合える環境を作ることです。成果は、仕事の正確さと負担がどう変わるかで見ていきたいところです。
出典・参考にした一次情報
確認日:2026年10月27日。図解・比較表は、以下の資料を基に「はじめてのAI」が作成しました。PDFの表示ページは、源内基準の本文ページより2ページ後です。
- デジタル庁「ガバメントAI『源内』」最終更新:2026年10月20日/概要・提供アプリ・展開方針。
- デジタル庁:AIエージェント利用環境と源内基準の発表2026年10月20日/対象規模・順次導入・今後の目標。
- デジタル庁「エージェントチャット 導入編」公式一覧の掲載日:2026年10月9日/操作・マイドライブ・スキル。
- デジタル庁:約18万人を対象とする大規模実証の開始報告2026年5月28日/実証開始・利用可能見込み。
- デジタル庁:源内基準 第1版〈PDF〉2026年10月20日/情報管理・役割・利用条件・機能比較。
- デジタル庁:AIエージェント利用環境の導入資料〈PDF〉2026年10月20日/2つの環境・スキル共有・政府方針。
- デジタル庁:約18万人を対象とする大規模実証の計画2026年3月6日/実証の期間と計画。
- デジタル庁:源内のOSS公開について2026年4月24日/ソースコードなどの公開範囲。
- OpenAI「ChatGPT Overview」2026年10月27日確認/用途・機能。
- OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」ページ表記の更新日:2026年1月8日/法人向けデータ保護。
- OpenAI「Data controls in ChatGPT」2026年10月27日確認/個人向けのデータ設定。
- デジタル庁「エージェントチャット 初級編」公式一覧の掲載日:2026年10月9日/行政業務での操作紹介。
情報は2026年10月27日時点です。各府省庁の提供範囲や今後の予定は更新される場合があります。
